まだ沸き立ったままの歓声がコンクリートに似たスタジアムの中を
揺れるように包んでいる

埃臭い倉庫の中でもそれは耳鳴りのように響く
そればかりが気になって、いつも浮かべている
自信に満ちた笑みが消えているのに自分では気付けなかった




「…緑川、さんアンタ何で…」

抵抗しないことよりも、何も言わない静かな目で見つめてくる
その真意が掴めなかった。

「状況分かってますか…ねぇ」

奥歯を軋ませ、力任せに内壁を抉る

それでも打ち付けられた動きに合わせて
半身がぶれ、微かに息を震わせるだけで
その薄い反応にまたギリ、と奥歯が軋んだ

ファンも女も、時には男さえ魅了してきただけの若さもルックスもある
その証拠に今まで少しでも興味を持った相手はすぐモノにしてきた

それに馴れきって、試合後の緑川さんに声をかけた


――他の選手には内緒で、俺と来てくれませんか。


勿論いぶかしがられるだろうとは思ったが
そこはどうにでも言い訳を作って言いくるめればいい。

さてどうやって安心させようか…と思考を巡らせていたのだが
予想に反してドリさんは表情ひとつ変えず、
あぁ良いぞ。とあっさり着いてきてしまったのだ

そのままあまりにすんなりと組み敷かれ、一度
どうした?とどこか呑気な口調で訪ねただけで
抵抗どころか顔色ひとつ変えなかった

それにかえって焦燥感に似たものを煽られ、
プライドの強い星野にとっては堪ったものじゃなかった

「っ…なんか言うことないんすか…」
「なにか言って欲しいのか?」

相変わらず世間話のような口調は変わらず
試合中の方がまだ俺を見ていたんじゃないかとさえ思えてくる

「…仕方ないな」

仰向けのままコンクリートの床に伸びていた緑川さんの腕がしなやかに動く

その拍子に巻くれあがったアンダーシャツから
鍛えられて締まった腹筋と色の付いた乳首が覗き、思わず生唾を飲みかけた瞬間―

「ッが…!?」

鼻の奥に響く衝撃と喉に落ちてくる血のニオイと味に思考が真っ白に飛びかけた
殴られて鼻血が出たのだとかろうじて理解はしたものの
あまりに今更な抵抗ーいや抵抗なのかすら分からない

その一発以降またぱたりと緑川さんの腕は床の上だ

「…緑川、さ…ッ?」

意図が読めずに名前を呼ぶより先に
挿入れたままだった下腹部を急に締め付けられ、
語尾が引っくり返るように揺れた

「!?っ、う…ッ」

さっきまでとは明らかに違う内壁の動きに思わず腰を引こうとするが
途端根本から絞りとるように締め付けられ
気が付けばあっという間に緑川さんの中に精液をぶちまけていた



「っく、…はぁ…はっ……」

びゅ、びゅる…っとそれこそ比喩ではなく絞りとられるような感覚に
腰を抜かしそうになるのをかろうじて耐えるが、
射精の余韻に膝が情けないほどぶるぶると震えた

まるで自慰行為の後のような情けなさに唇を噛む

だというのに間延びした射精感は今までのセックスと比べ物にならないほどで
鼻っ面の痛みさえ忘れかけた

「もう良いか、抜くぞ」

さらりと言い放って射精からそのまま繋がっていたモノを引き抜かれ
その感触にすら声を上げそうになった

ずるん、と抜けた拍子に中に出した精液が少し漏れて床に落ちる

それを一瞥してから俺のズボンに挟まれたタオルを抜きとり
ごしごしと拭いてから ゴムくらいつけろ。と言い放たれる

「殴る…ならさっきじゃなくて今だったんじゃないですか…」

「さっきの一発で十分だろ。
 拳は痛めたくないし、お前のも痛めるわけにいかないから顔にしといた」

文句ないだろ。と
身なりをすっかり整え終わった姿で言われては何も言えない

「頭を冷まさせるなら鼻先殴ってやって、
 身体の方は一発出させれば落ち着くモンだしな」
「………俺は犬っすか…」
「犬ってタマじゃないか?大型犬ならキライじゃないぞ?」

もっとも発情してなければの話だけどな。と
言われてしまえばぐぅの音も出ない

「若いのは良いがな、もう少し発散の方法変えた方が良いぞ。
 じゃ、早めに汗流しに行けよ」
「はっー…」

発散の方法、って

単に溜まってるから手を出したんだと思われているのは
さすがに我慢ならない

そういうだけの相手ならちゃんと居ー…じゃない

「俺はっ…緑川さんッ…!」

立ち去ろうとする右腕を無意識にひっ掴むと
直に体温を感じて心臓が跳ねた

そういえば途中、もどかしさに耐えきれず手袋を取ったんだったと
今更になって思い出す

試合の後の握手なら何度かした。
けれど直接、あのドリさんの腕をこうして触れたことなんてない

まがりなりにも抱いた後だというのに
その腕の感触にじわりと掌が熱ばんでいく


「……星野」


俺は、ずっとこの腕に、手に…憧れてきたんだ
そう吐き出してしまおうかと息を強く止めた

「悪いがその続きは聞かないぞ」
「ッツ…!?」

まるでボールがこぼれ落ちるように
掴んだ腕をあっさりと振りほどかれる感覚と
遠のく肌に掌が冷めていく感触

崩れ落ちそうなショックを何とかプライドだけで
表情に出さないことで精一杯だった


今更痛んできた鼻先に奥歯を噛みしめると
そこに振りほどかれたはずの指が
スリ、と撫でるように掠めていった


「もう少し男前になるまで言わせない方がお前のためだろうしな」


離れた指先が顔から下半身を指さすように降りてから
次ウチと当たるまでにもう少し頑張れ。と言い残して閉じたドアに

歓声を掻き消すようなちっくしょぉおお!という怒号がぶつかって消えてた


がんばりましょうね星野さん(下半身を)
星野のセクースって何か枕営業して潰れるホストの暴君系セクスっぽいよね。
ようするに下手ってことですかサーセン。
へたっていうか気持ち良いのは自分だけっていうか。…オナニープレイ!
ドリさんのけつまん掘れただけ有難く思いなオナニー野郎!
ちくびで生唾飲むな!!

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